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埼玉弁護士会所属の弁護士です。

新算定表

2019年12月23日に新しい算定表が公表されました。

http://www.courts.go.jp/about/siryo/H30shihou_houkoku/index.html

全体的に増額になったようです。

 

概要については,平成30年度司法研究概要に記載されています。

http://www.courts.go.jp/vcms_lf/gaiyou_592KB.pdf

 

旧算定表を基に養育費の取決めをした方は,新しい算定表の公表を受けて,養育費を新しい算定表に基づく金額に変更したいと考えると思います。

しかし,司法研究概要によると「本研究の発表は,養育費等の額を変更すべき事情変更には該当しない」と記載されています。

 

養育費の増額請求が認められるには事情変更が必要となります。

しかし,上記の司法研究概要の記載からすると,新しい算定表の発表は事情変更にならないとのことですので,この発表があったことのみでは増額は認められないという結論になります。

 

この新しい算定表の公表により,現在担当している事件で,終結目前だった調停や審判がいくつかあったのですが,終結を延期することとなりました。

公表の発表のタイミングで養育費の額が万単位で変わってしまうので,裁判所も延期には寛容でした。

不貞?

夫が風俗に行っていた!こんな不倫する夫とは離婚したいし,慰謝料も請求したい!というご相談を受けることがあります。

 

実は,風俗店に勤務する女性との肉体関係が不貞行為に該当するかについては,問題があります。

判例では,風俗店舗内での肉体関係は,直ちに婚姻共同生活の平和を害しないと判断したものがあります。

 

不貞になるか否かということには,風俗店のような不特定多数の人物との性的サービスを前提とする肉体関係なのか,それとも特別に特定の人物とだけの個人的な肉体関係なのかということがポイントになってくるようです。

そのため風俗店に通っているという事実だけで,離婚や慰謝料請求が認められるかというと,それだけでは難しい場合もあり,営業活動を超えた男女の関係の存在を主張立証していく必要が出てくる可能性があります。

有責配偶者からの離婚請求

不倫をしたパートナーから離婚請求をされたけど,経済的な不安が強いから離婚はしたくないというご相談を受けたので,少し解説したいと思います。

 

一般的には,別居から3~5年程度経過していれば,婚姻関係の破綻が認められ,離婚判決が出る可能性が高いと言われています。

 

しかし,離婚裁判における有責配偶者からの離婚請求については,最高裁大法廷昭和62年9月2日判決において,

①夫婦の別居が両当事者の年齢及び同居期間との対比において相当の長期間に及び,

②未成熟の子が存在しない場合には,

③相手方配偶者が離婚により精神的・社会的・経済的に極めて苛酷な状態に置かれる等離婚を認容することが社会的正義に反すると言えるような特段の事情が認められない場合には,認められ得るとされました。

 

そのため,別居期間がさほど長くない・小さい子供がいる・離婚すると生活できないなどの事情がある場合には,離婚が認められない可能性が高くなります。

 

①どの程度の別居期間が必要かということについては,同居期間との兼ね合いによりますが,一般的に離婚が認められると言われる3~5年よりは長い期間が必要なようです。

②未成熟の子については,小学生程度の小さい子供に限らず,高校生や場合によっては大学生などの経済的なサポートが必要な子供も含まれるようです。

③の要件については,有責配偶者の婚姻費用・養育費の支払い状況なども考慮されるようです。

講演

朝霞第二小学校において,キャリア教育のゲストティーチャーとして授業に参加して参りました。

今回の授業では,弁護士だけでなく,人力車の俥夫・不動産管理業・農家・オートバイの設計士の方もゲストティーチャーとして参加されていました。

 

授業では,仕事内容・一日のスケジュール・職業を選んだ理由と目指した時期についてそれぞれ発表し,その後質疑応答でやりがいや辛いこと,働くうえで最も大切にしていることなどをお話しました。

キャリア教育講義は単独で行うことが多いため,他の職業の方のお話を聞くことができ,私にとっても学びの多い楽しい時間となりました。

 

多数のゲストティーチャーがいたため,仕事の性質によって,やりがいや最も大切にしていることが大きく違うということがはっきりわかり面白かったです。

他方で,どの職業でも,人との繋がりは辛い時の心の支えになるということ,将来的に大切な財産になるということもわかりました。

 

校長先生や担任の先生方が,児童の輝かしい未来を実現するため,熱心に活動されていることがとても伝わってくる学校でした。

明るく温かい先生方のご指導のもと,自己実現に向けて,のびのびと成長していってほしいです。

貴重なお時間をくださり,ありがとうございました。

再婚した場合の養育費(後婚の妻の子の養育費)

夫には前婚の子がいるのですが,その場合の養育費はどうなるのですか?という質問も受けることがあります。

 

【前婚の子の養育費を支払っている場合】

この場合には,前婚の子の存在について考慮します。

算定表を使うことはできませんので,計算式で計算して算出します。

前婚の子に支払う養育費の金額を控除するのではなく,子の年齢に応じて0~14歳の指数,15~19歳の指数を用いて計算します。

 

【前婚の子の養育費を支払っていない場合】

この場合には,前婚の子の存在には考慮しません。

そのため,基本的には算定表に従い,養育費を算出します。

再婚した場合の養育費(前婚の子の養育費)

再婚した場合に,養育費が減額になるのか?という質問がされることがあります。

そこで,義務者(養育費を支払う義務がある人)が再婚した場合について説明したいと思います。

 

ただ単に再婚したというだけでは減額になりません。

以下の事情がある場合には,減額事情となる可能性があります。

 

〇 再婚相手との間の子どもが生まれた場合

 この場合には,前婚の子と後婚の子が同居したと仮定し,前婚の子の養育費を計算します。

 そのため,減額事由ありと判断されます。

 

〇 後婚の妻の子どもと養子縁組をした場合

 養子縁組をした場合には,扶養義務が法的に生じますので,この場合も 減額事由ありと判断されます。

 

〇 後婚の妻の妻が無収入の場合

 この場合は,後婚の妻との間に子がいない場合でも考慮される場合があるようです。

 

 

遺産管理人②

遺産管理人として,まず着手したのは,預金口座の開設及び預金の払い戻しの手続きでした。

しかし,ここで問題が発生。

某全国展開しているひらがな4文字の銀行が,預金口座の開設を拒否。

さらに,被相続人名義の口座解約についても拒否。

 

遺産管理人には,保存行為として預金の払戻し及び口座解約の権限が認められているにもかかわらず,理由も述べずに「裁判所が権限を認めても,当行は払戻しは認めない」などと意味不明の理屈を述べて払戻しを拒否してきました。

2度ほど窓口で審判書きを提示して説明し,本部に確認するようにと述べたのですが,それでも拒否。

 

しかたなく,本店に内容証明郵便を送付し,払戻請求をしたところ,ようやく法務部の方が対応し,払戻を得ることができました。

窓口での申し入れから,払戻を得るまで,結局3か月かかりました。

 

口座開設については,某銀行に拒否されたため,埼玉りそな銀行にて開設しました。

審判書きを示し,根拠条文についてまとめた書類をお渡しして説明したところ,しばらく内部で検討したうえ,こころよく口座開設に応じてくれました。

おかげで,被相続人の死亡後に役所から還付されるお金などを問題なく管理することができました。

 

某銀行については,払戻を3か月も不当に拒否したことから,税金の支払いができず,延滞税が発生してしまいました。

利用者も非常に多い銀行ですから,このような利用者に損失を与えるような不誠実な対応については,改めていただきたいです。